当サイトでは、相生山緑地問題について、3つの要因と8つの問題点に整理して検証しています。

3つの要因と8つの問題点

このページでは、要因②「工事による影響」について、掘り下げます。


工事によって、何が壊されるのか?

工事による影響には、重大なポイントがあります。

「道路建設のために伐採された森」、「切土・盛土で削られた地形」、「寸断された地下水脈」、これらは、どれほど技術が進歩しても二度と元には戻りません。

つまり、不可逆的な破壊です。

弥富相生山線の工事をする場合、以下のような大規模な不可逆的な破壊が行われます。

  • 森林の伐採(延長約892m、幅員12〜16mにわたる樹木の全面撤去)
  • 地形の改変(大規模な切土・盛土による斜面の削平)
  • 地表の遮水化(雨水を吸い込む土を削り、アスファルトで覆う)
  • 谷筋(水脈)の横断(もともと雨水が集まる自然の集水区域を道路で遮断)

これらの工事による変化は、単に「樹木が減る」という表面的な問題にとどまらず、「生態系」「水環境・防災」「森の価値」という3つの経路へ、深刻な悪影響を及ぼします。


危機①【生態系】

工事による第1の影響は、希少種をはじめとする生態系への直接的な打撃です。

コア(中核部)の直接破壊と「エッジ効果」

森の樹木を幅12〜16mにわたって帯状に伐採すると、その面積分の植物が失われます。

問題はそれにとどまりません。

道路によって森が二分されることで、光や風が森の奥深くまで差し込むようになり、森内部の湿度や湿潤な環境が劇的に変わります。

これをエッジ効果と呼びます。

これにより、実際に伐採された面積を大きく超える範囲で、生息環境が劣化します。

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ヒメボタルの生息地と「絶滅の渦」

市民団体による長年の現地調査データでは、道路予定地とヒメボタルの高密度な生息・繁殖エリア(帯状の生息地)が直接重なっていることが判明しています。

保全生態学において、最も生息密度の高い中央個体群(コア)が破壊されると、残された個体群が小規模に分断され、

「近親交配の進行 ⇒ 遺伝的多様性の低下 ⇒ 生存率低下 ⇒ さらなる個体数減少」

という絶滅の渦へ突入するリスクが懸念されています。

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「生物多様性重要エリア」に指定された区域

さらに、行政自身が「生物多様性重要エリア」の最重要区域に指定している相生山緑地の核心部を、自らの工事で直接削り取るという、深刻な矛盾も生じています。

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危機②【水環境・水害】

3つの危機の中で、定量的なデータが揃っているのが、水環境の悪化と防災上のリスクです。

「緑のダム」の破壊と、流出率の跳ね上がり

健全な森林は、降った雨を地中に蓄え、ゆっくりと川へ流す「緑のダム」の機能を持っています。

しかし、工事によって樹木が失われ、地表がアスファルトで覆われると、雨水は地中に染み込まず、一気に表面を流れ出します。

  • 学術検証委員会(2010年)の試算:道路整備によって、この地域の雨水の直接流出率は37%から55%へと著しく跳ね上がることが示されています(第3回検討会・寺井委員提出データ)。

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郷下川・野並地区の浸水リスクとの直結

相生山緑地の道路予定ルートは、地形的に雨水が集まる「谷筋(沢筋)」と一致しています。

この谷筋から流れ出る雨水は「笹原排水路」を経由し、郷下川(ごう下川)へと合流します。

郷下川は、2000年の東海豪雨において氾濫し、天白区野並地区に最大2mを超える深刻な床上浸水をもたらした河川そのものです。

京都大学による当時の学術シミュレーションでも、野並地区の浸水被害の主要因が郷下川からの溢水であったことが裏付けられています。

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市の貯留対策の限界

市側は対策として「約1,000m³の雨水貯留施設」を計画していますが、これは「道路の舗装面から新たに増える1時間程度の雨」を一時的に溜める計算に過ぎません。

東海豪雨のような2日間にわたる連続的・記録的豪雨や、緑地全体の保水力低下(流出率55%化)という抜本的なリスクに対しては、十分な安全弁とは言えないのが実態です。

さらに、地中に水が染み込まなくなることで地下水位が低下し、森全体の乾燥化の悪循環や湧水の枯渇を引き起こすリスクも懸念されています。


危機③【森の価値】

第3の影響は、地域社会や市民にとっての「自然資産」としての価値の毀損です。

「利用の質の低下」と「存在の消失」の違い

車が走ること(一般車両の通行)による被害は、「騒音や光によって、森の癒やし効果を感じにくくなる」という利用・体験の質の低下です。

一方、工事による被害は、「都市の貴重な自然資本(グリーンインフラ)が物理的に消滅する」という存在そのものの消失です。

  • 多面的機能の喪失:都市のヒートアイランド現象を緩和し、豊かな雨水浸透能力を持つ自然環境が削り取られます。
  • シビックプライドの毀損:大都市・名古屋の住宅街に残された「奇跡的な里山」として、市民が何世代にもわたって保全活動に関わってきた歴史と誇り(シビックプライド)が、不可逆的に損なわれます。

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結論:取り返しのつかない選択をしないために

道路計画の「運用」や「使い方」は、後から時代や社会の要請に合わせて変更することができます。

しかし、「工事」という物理的な破壊は、一度実行されてしまえば、どれほどの予算を投じても、元の生態系や水脈を復元することはできません。

「一度工事を進めてしまったら、二度とやり直しが効かない」という不可逆性の重みを、客観的なデータに基づいて慎重に評価することが必要です。