天白区の相生山緑地を横切る道路計画「弥富相生山線」。

この計画をめぐる名古屋市の姿勢を、名古屋市自身が進めてきた環境政策と照らし合わせてみると、大きな矛盾が浮かび上がってきます。

相生山緑地は、名古屋市自身が定めた「生物多様性重要エリア」

名古屋市は2024年7月、「名古屋市内の生物多様性重要エリアマップ」を公開しました。

これは、希少種の生息状況や緑地・水辺の状況などをもとに、市内を250mメッシュ単位で評価し、生物多様性保全上重要な場所を可視化した地図です。

開発・不動産事業者に対して、自主的な環境配慮を促すことを目的としています。

このマップにおいて、相生山緑地は全域が「重要エリア」に含まれています。

つまり、弥富相生山線が通ろうとしている場所は、名古屋市自身が「特に配慮すべき」と公式に位置づけている場所そのものです。

「あいちミティゲーション」の手順を、名古屋市自身が踏み外している

愛知県には「あいちミティゲーション」という独自の仕組みがあります。

開発などにおける自然への影響を、次の順序で検討・実施することを定めたものです。

  1. 回避:開発を中止したり、別の場所で行うことにより自然への悪影響を避ける
  2. 最小化:開発面積を縮小するなどして、自然への悪影響をできる限り少なくする
  3. 代償:それでも残る影響を、生態系ネットワークの形成に役立つ形で埋め合わせる

2013年に「あいち生物多様性戦略2020」の一環として試行が始まり、2021年の「あいち生物多様性戦略2030」策定にあわせて仕組みが再整理された、愛知県独自の制度です。

ここで問題になるのが、相生山緑地という「重要エリア」全域に道路を通す計画において、名古屋市が第一の措置である「回避」を検討した形跡がないまま、いきなり第二の措置「最小化」に進んでいるという点です。

実際、住民説明会に対して寄せられた市民意見でも、この点が繰り返し指摘されています。

「名古屋市内の生物多様性重要エリア」が名古屋により指定されているのをご存じですか? 相生山は全域が「重要エリア」に含まれます。そのような重要な場所を「愛知ミディゲーション」の第1に取るべき措置である「回避」を検討せず、「橋にするので、ホタルに影響はない」と第2の措置「最小化」に進んだのは、名古屋市。愛知県の決めたことを自らくつがえしています。

「橋梁構造にするので影響は小さい」という説明は、あくまで「最小化」の工夫です。

しかし本来、その前段階として「そもそも、この重要エリアを避けるルートは取れないのか」という「回避」の検討が、手順として先に来るはずです。

この順序を踏まえずに「最小化」から議論を始めることは、愛知県が定めた仕組みそのものを、名古屋市が自ら軽視しているといえます。

「重要エリアマップ」自体が、直近で国から表彰されている

ここが、今回の話の中でも特に指摘しておきたい点です。

先ほど紹介した「名古屋市内の生物多様性重要エリアマップ」の取り組みは、2024年12月、国土交通省の「第5回グリーンインフラ大賞」において、優秀賞を受賞しました。

名古屋市の公式サイトにも、次のように明記されています。

「この取り組みが国土交通省の第5回グリーンインフラ大賞で優秀賞に選ばれました。」

グリーンインフラ大賞は、緑地・水辺・森林といった自然の機能を、都市を支えるインフラとして活用する優れた取り組みを、国が表彰する制度です。

つまり名古屋市は、「相生山緑地を含む重要エリアを可視化し、自然への配慮を促す」という取り組みそのものを、国から高く評価されたばかりなのです。

にもかかわらず、その表彰の対象となったマップが「重要エリア」と指定する、まさにその場所(相生山緑地)を横切る道路計画については、「回避」の検討を飛ばして工事を進めようとしています。

受賞したばかりの自らの取り組みの理念を、自ら反故にしようとしている異常な事態です。

環境政策と道路計画が、真正面から矛盾している

ここまで見てきた事実を整理すると、次のようになります。

  • 名古屋市は、相生山緑地を「生物多様性重要エリア」として自ら指定した
  • そのマップは、国から「グリーンインフラ大賞・優秀賞」という形で評価された
  • 愛知県が定める「あいちミティゲーション」は、まず「回避」を検討すべきと定めている
  • しかし相生山緑地を巡る道路計画では、その「回避」の検討がなされないまま、「最小化」の話から議論が始まっている

もう一件、別の市民意見にも、同様の疑問が寄せられています。

相生山緑地は名古屋市が生物多様性重要エリアと位置付けているエリアです。下記内容と反する工事再開は、納得致しかねます。再考をお願いいたします。

行政の矛盾した姿勢

「重要エリア」に指定し、その取り組みで国から表彰されながら、同じ場所に道路を通そうとする——この一連の流れは、名古屋市の環境政策と道路行政が、庁内で整合性を持たないまま進められていることを示しています。

縦割り行政の弊害が、きわめて異常な形で露呈しています。

このような行政のあり方もまた、道路計画「弥富相生山線」の大きな問題点の一つです。


参考リンク