相生山緑地(名古屋市天白区)の森を壊す道路建設計画「弥富相生山線」について、当サイトでは6つの問題点を明らかにしています。

このページでは、「問題点⑥ 財政問題と、公共事業としての不適格性」について検討しています。

2026年度に「過去最大・約922億円の収支不足」

名古屋市の財政は、2026年度に過去最大となる約922億円の収支不足が見込まれるなど、厳しい状況にあります。

アジア・アジアパラ競技大会の開催経費の増大や職員の人件費増加などが重荷となり、貯金にあたる「財政調整基金」を取り崩す異例の事態に陥っています。

参考URL:苦境に陥った名古屋市財政の未来の舵取り -財政調整基金が激減する事態-

公共サービスの値上げラッシュ

さらに、名古屋城や動植物園、水族館の入場料など、公共サービス値上げラッシュも相次いでいます。

このような状況下で、この不合理な道路計画を推進することは妥当と言えません。


インフレ・資材高騰により、費用便益比(B/C)はどうなる?

公共事業を行う際は、かかったお金(費用)に対してどれだけ便益があるかのバランスを示す「費用便益比(B/C)」による評価が必要です。

昨今の深刻な建築資材の高騰や人手不足による人件費の上昇を考えれば、当初の予算から大幅に費用が増えているはずです。

費用便益比(B/C)の再算定を拒否

名古屋市は、2026/5/13の土木交通委員会(令和8年請願第1号 弥富相生山線工事再開のための自然環境・生活環境への環境影響評価と費用便益比を明らかにすることを求める件)にて、費用便益比(B/C)の再算定を拒否しています。

名古屋市は、最新のデータをもとに費用便益比(B/C)を再計算して、市民に開示するが義務があります。


長期的な維持管理コスト

公共インフラの議論では、建設費ばかりが注目されがちですが、完成後にかかり続けるコストこそが、長期的な財政負担の本体です。

維持管理費・耐用年数・将来の更新費用の過小評価は、公共事業全般に共通する典型的な問題であり、名古屋市の深刻な財政難を考えれば、なおさら軽視できません。

さらに、長期的な人口減少が進む中で、この道路が将来「負の遺産」となるリスクも現実的です。

維持できないインフラを今つくることは、未来の市民への負担の先送りにほかなりません。

建設コストだけでなく、50年・100年単位の総費用と財源の見通しを、市は今すぐ市民に開示すべきです。


「見えにくい環境コスト(外部不経済)」の無視

道路をつくる費用を計算する際、行政は目に見える工事費しか考えていません。

しかし、道路建設によって引き起こされる以下の損害は、すべて将来私たちが支払うことになる「大きな環境コスト(外部不経済)」です。

  1. 住環境悪化と排気ガス汚染
  2. CO2排出コスト
  3. 生態系・生物多様性への影響
  4. 地下水涵養機能の低下
  5. 洪水・治水リスクの増大
  6. ヒートアイランド現象への影響
  7. 景観・文化・地域アイデンティティの損失

これらのコストは個別には小さく見えても、

  • 長期間(30~100年)
  • 広い地域
  • 多数の住民

にわたって累積すると、社会的コストは非常に大きくなり得ます。

道路事業の費用便益比(B/C)の評価期間は一般的に40年ですが、環境コストも同等かそれ以上の評価期間を用いるべきです。

しかしながら、これらの環境コストは公共事業における費用便益比(B/C)の計算から無視されがちです。

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グリーンインフラとしての「自然資本」の経済評価の欠落

相生山緑地は、巨大なグリーンインフラ(生態系サービス)です。

子供たちの教育の場であり、地域のアイデンティティであり、私たちの心を癒やす場であり、周囲を涼しく保つ天然のエアコンです。

このような自然が持つ経済的価値(自然資本)を正しく金額に換算して、その恩恵の大きさを理解することも大切です。

しかし、名古屋市の説明には、その経済的評価が脱落しています。

「環境コスト(外部不経済)」との違い

この「グリーンインフラとしての自然資本の経済評価」は、前述の「見えにくい環境コスト(外部不経済)」と、どちらもお金に換算しにくい環境価値を測る、という点では共通しています。

すなわち、

  • 環境コスト(外部不経済):道路ができたら、どれだけの損害が生じるか?
  • 自然資本の経済評価:この森は、そもそもどれだけの価値を生み出しているか?

という関係です。

この2つの物差しを使い分けることで、より解像度の高い議論ができます。


公共事業全体における「優先順位づけ」が不明瞭

名古屋市は財政難を抱えており、税収の伸び悩みや社会保障費の増大により、財政調整基金を取り崩す事態も生じています。

実際、金山地区の再開発事業も、予算の見通しが立たないことを理由に中止となりました。

このように、限られた財源の中で、市はあらゆる事業について厳しい優先順位づけを迫られているはずです。

とりわけ「弥富相生山線」道路計画は、昨今のインフレ・物価高に伴い、当初予算よりも大幅な事業費の増加が見込まれています。

だからこそ本事業についても、他の公共事業(インフラ整備事業)と同様に、費用便益比(B/C)と環境コストに基づいた、公共事業全体における優先順位をはっきりさせる必要があります。

ところが、名古屋市はこの優先順位づけを明確にしていません。

インフラや教育施設の老朽化対策など必要性の高い事業を後回しにして、「弥富相生山線」道路計画を推進しているとしたら、大問題です。


防災機能としての必要性が希薄

1. 緊急・防災時の機能はすでに確保

名古屋市は、災害時の避難路や緊急車両の時間の短縮という「防災機能」を謳っています。

しかし、緊急時・防災としての機能は、消防局の意見によれば「あれば使う」程度とのことで、緊急・防災時の機能はすでに確保されています。

2. 避難路ではなく避難先

そもそも相生山緑地は、防災拠点としての位置づけであり、避難路ではなく避難先となる場所です。

避難時間が短縮される、というのは、ナンセンスです。


少子高齢化により新規道路の必要性が希薄に

少子高齢化を迎える中、資料によれば、相生山緑地周辺の交通量も、将来的に、減少傾向にあると予想されています。

「弥富相生山線」の新設道路の利用者もまた、将来的に減少すると予想されています。

長期的に見れば、道路の必要性もどんどん希薄化して行きます。

一方で、道路の建設・維持管理にかかる総コストが変わるわけではなく、市民一人あたりの財政負担は増えていきます。

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公共事業としての原則を満たしていない

税金を使った公共事業を行うには、

  • 必要性・緊急性
  • 合理性
  • 比例性
  • 持続可能性
  • 政策整合性
  • 統治性(ガバナンス)

といった原則が必要です。

しかし、これまで問題点について見てきたように、この道路計画には、どの原則も当てはまりません。

1. 必要性・緊急性がない:

周辺にはすでに道路が整備されており、車を使わない高齢の住民もたくさん暮らしています。

さらに長期的には人口減少が進むため、新しい道路を無理につくる必要性は見当たりません。

2. 合理性がない

環境への影響や、本当に渋滞や入り込み交通が減るのかという科学的な検証がまともに行われないまま進んでおり、説得力がありません。

3. 比例性(バランス)を欠いている

また道路をつくることで得られるのは「数分間の時間短縮(個人の便利さ)」です。

そのために、貴重な里山の生態系や水環境という「みんなの財産(大きな社会的損失)」を破壊するのは、あまりにもバランスを欠いています。

4. 持続性に疑いがある:

昨今の深刻な資材高騰や人手不足によって、工事費が膨らむ財政リスクが生じています。

さらに、完成後も環境への長期的な負荷(負担)が残り続けます。

森を乾燥させ、下流域の洪水などの災害リスクを逆に高めています。

5. 政策の整合性がない

名古屋市は「生物多様性なごや戦略」「水の環復活なごや戦略」といった政策を自ら掲げています。

しかし、「弥富相生山線」計画は、これらの方針と正面から矛盾する内容になっています。

6. 統治性(透明性・説明責任)に問題がある

市長との対話が実施されていません。

現市長は、道路事業を休止させていた「河村前市長の方針を100%継承する」という公約を掲げて当選しましたが、その後、方針を転換して工事再開を表明しました。

この転換の理由について、十分な説明がなされているとは言い難い状況です。

行政の説明には、疑問点が目立ちます。

本事業は、統治性(ガバナンス)や住民合意についても重大な問題を抱えています。

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名古屋市当局への要望

以上を踏まえ、名古屋市当局に対して、次の2点を求めます。

  1. 「道路建設の中止(ゼロ・オプション)」を選択肢から排除せず、財政および現代の環境基準のもとで議論すること。
  2. 市長自身が出席し、市民の疑問に直接向き合う「開かれた再説明会」を開催すること。