当サイトでは、相生山緑地問題について、3つの要因と8つの問題点に整理して検証しています。
このページでは、要因①「一般車両の通行」について、掘り下げます。
「一般車両の通行」が、最も核心的な問題
「弥富相生山線」道路計画を巡る8つの問題点を3つの要因に集約してみると、ある事実が浮かび上がります。
すなわち、8つの問題点のうちの半数(問題点①②③⑤)が、年間281万台の「一般車両の通行」という一つの要因に行き着く、という事実です。
つまり、
- 問題点①:住環境の悪化・事故リスク
- 問題点②:交通効果の根拠の薄さ
- 問題点③:生態系への日常的な影響
- 問題点⑤:森の価値の目減り
これらは、すべて「一般車両を通す」という一つの要因から生じています。
言い換えれば、「一般車両を通行させるかどうか」こそが、この事業をめぐる最も核心的な論点だといえます。
つまり、地域住民との間で十分な議論と合意形成が必要な問題です。
議論と合意形成が行われていない論点
これまでは、「道路を通すか通さないか」という議論が中心でした。
しかし、その議論と並行して、「一般車両を通すか通さないか」という議論も行うべきだったのです。
にもかかわらず、当局と地域住民との間で、本件について十分な議論が行われた形跡はありません。
むしろ、当局に都合が悪い論点であるがゆえに、意図的に避けられていたのではないか? という疑問すら浮かびます。
住環境の悪化は、道路建設の工法とは無関係
もう一つ、重要な論点があります。
そもそも住環境への悪影響を心配する地域住民にとって、道路建設の工法の種類などは無関係の問題という点です。
橋りょう構造であろうと、どのような形式であろうと、年間281万台の不特定多数の一般車両が通行することに変わりはありません。
騒音も、排気ガスも、事故のリスクも、住民の生活圏に日常的に流れ込んでくる交通量によって生じるものであり、工法の工夫で解消できる性質のものではないのです。
ミスリードの疑い
にもかかわらず、「環境に配慮した工法だから問題ない」という主張が、あたかも住環境問題への回答であるかのように語られる場面があります。
しかし、橋りょう構造という工法上の配慮は、主に生態系への影響を軽減するためのものであり、住環境問題への回答にはなっていません。
これは、論点をすり替えた、一種のミスリードだと言わざるを得ません。
当局は、住民のことを考えていない?
ここまで見てきた通り、「一般車両の通行」という核心的な論点をめぐって、当局の姿勢には、住民への配慮を欠いていると思われる点が、いくつも見つかります。
入り込みの問題や事故リスク
例えば、当局の説明によれば、車両の入り込み問題については、山根学区の一部地域だけを対象にしています。
しかし、新たな入り込みが発生すると予測される相生学区や高坂学区、沿線地区についての情報は、206年3月1日の「弥富相生山線の折衷案に関する説明会」資料には、いっさい見当たりません。
事故リスクの増加についても、この説明会資料には記載がありません。
市の予測交通量(7,700台/日)を年間に換算すると、約281万台という、これまで存在しなかった規模の交通が新たに発生することになります。
全国の幹線道路の重大事故率を機械的に当てはめれば、年間で数件規模の事故が新たに発生してもおかしくない水準です。
これほどの規模の変化について、リスクの説明が一切なされていないというのは、あまりにも不誠実な姿勢だと考えます。
騒音問題
道路の騒音に関する基準には、目的も法的根拠もまったく異なる、「環境基準」と「要請限度」という2つの基準が存在します。
「弥富相生山線」道路計画では、本来使うべき「環境基準」ではなく、より成約の緩い「要請限度」という基準を用いています。
この基準のすり替えは、「当局は住民のことを考えていないのではないか?」という疑惑を、いっそう強くします。
「折衷案」の名に値しない
この論点は、名古屋市が示した「折衷案」という呼び方そのものにも深く関わってきます。
本来、「折衷案」という言葉は、道路建設に賛成する立場と、反対する立場の意見を汲み取り、両者が歩み寄れる案を指すはずです。
実際、当初の折衷案では「一般車両は通行不可」「緊急車両だけを通す」という、住環境や生態系への影響を最小限に抑えるための明確な制約が設けられていました。
新たな「折衷案」
ところが、名古屋市が示した新たな「折衷案」は、この制約を外し、一般車両を通行可能にするというものです。
これは、住環境や生態系への影響を抑えようとしていた当初の姿勢から、当初計画の焼き直しに後退したことを意味します。
折衷どころか、実質的に、道路をそのまま通すという結論になった形です。
これでは、「賛成・反対、双方の意見を折り合わせた案」とは、到底呼べません。
一般車両を通行させるという決定は、「折衷案」という名に値しないと言えます。
まとめ
- 8つの問題点のうち半数(①②③⑤)が、「一般車両の通行」という一つの要因から生じています。
- この核心的な論点について、地域住民との十分な議論・合意形成は行われていません。
- 「環境に配慮した工法」は、住環境問題への回答にはなり得ません。
- 入り込み対策の対象地域の限定、事故リスクの説明の欠如、騒音基準のすり替えなど、当局の姿勢には住民への配慮を欠く点が複数見られます。
- 当初「緊急車両のみ」だった制約を外し、一般車両を通行可能にした現在の案は、もはや「折衷案」の名に値しません。
「道路を通すか、通さないか」という二項対立だけでなく、「一般車両を通すか、通さないか」という論点についても、あらためて地域住民を交えた、正面からの議論が必要だと考えます。